憧れのマイホームを手に入れて、家族みんなで住み始める。住宅ローンはあるものの、完済までの計画は立っているしこのまま働き続ければ数十年後には完全に自分たちのものになる…そう意気込んでから数年後、突然世帯主である夫が亡くなってしまった。こういうケースは、住宅ローンを組もうとする際に誰もが心配することである。世帯主が十分な生命保険に加入していたならば話は早いが、それ以外で例えば世帯主が蒸発したとか、大病にかかり働けなくなったとか、そういった場合の住宅ローンの引継ぎについては誰がどのように支払っていくのだろうか。いくつかの例を挙げてみよう。

まずは、夫が亡くなり十分な生命保険に加入していなかった場合。これはローンを組んだ際の状況で妻や子が連帯保証人となっていた場合には、支払いはその家族らに引き継がれる。たとえ妻や子が働いておらず収入がなかったとしても、支払い責任は自動的に移行されてしまう。どうしても払えない場合は、もう家を手放すしかない。

少し似たようなケースで、夫が十分な生命保険に加入しておらず死亡、しかし妻や子が連帯保証人になっていなかった場合。この場合でも通常は妻や子が支払いを引き継がなければならない。ただし、この引き継ぎは放棄することができる。夫が亡くなった場合、遺産相続をする。この時に、残された遺産としてローンなどの「負の遺産」も通常ならばそのまま引き継がなければならない。この相続権をすべて放棄してしまえば、支払いもしなくてすむ。総合的に考えて負の遺産の方が大きい場合は相続権を放棄した方が良いだろう。

しかしそもそも最近では、住宅ローンを組む際にこういった状況を危惧して、銀行側からほぼ強制的に「団体生命保険」に加入させられることがほとんどだ。これは世帯主が死亡した場合に、その家族に代わって銀行に住宅ローンを完済してくれる保険で、月々の支払はあるもののそういった場合に妻や子が一切残額を支払うことなく、持ち家も手放さずに済む。
長期に渡った支払いの中で何があってもいいように、安心して生活できるために存在する保険。何事もなく完済した後に「あの保険に加入した分のお金、もったいなかったね」と笑える状況に居られることが、本当の保険の存在意義のように思われる。